吸血鬼は淫らな舞台を見る


「KLT銀行のキャッシュカードか……」


「はい。キャッシュカードを盗らないなんて、犯人の目的はお金じゃなかったんですかね?」

 原田は小首をかしげる。


「あるいは被害者が事件に巻き込まれたことを知らせるために、わざと落としたのかもしれないな」

 サトウは腰を折って赤い水たまりを覗く。


「とりあえず舐めてみますか」


「頼む」


 瑠諏が鉄板に両手をつけて頭を下げると、舌を赤い液体へ這わせた。


 サトウはその異様な光景に慣れたが、経験済みの原田と予測できたはずの鑑識課の安本は顔をしかめた。
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