吸血鬼は淫らな舞台を見る
「旦那さんを心配している姿は嘘とは思いたくないですね。そもそも彼女は旦那さんが血液銀行に勤めていることを知っているんですかね?」
「いや、いまも知らないと思う。血液銀行に勤めていることは秘密厳守なはずだから平凡なサラリーマンとしか認識していないだろ」
「もし彼女がそのことを知っていたら?」
「怪しいよな。でも、まさかな……」
サトウが両手を広げて肩をすくめると、由貴と原田が書斎にやってきた。
「ブラシから毛は採取できたか?」
「はい」
サトウの取り繕った質問に原田は最小限の返事で無難に答えた。