吸血鬼は淫らな舞台を見る
観念した倉成を車に乗り込ませたとき、サトウの携帯が鳴った。
原田からだった。
『由貴さんが家を出ました。後をつけます』
「買い物か?」
『それが……』
「どうした?」
『黒いワンピースを着て家を出たので買い物に行く格好には見えませんね』
「葬式か?」
サトウは瑠諏を盗み見た。
由貴が吸血鬼を毛嫌いするような言い方をしてからそんなに間がない。
すぐに瑠諏と同じ黒い服を着て外を出るなんてちょっと理解しがたい行動だ。