吸血鬼は淫らな舞台を見る
そのとき原田は確かに男の声を聞いた。
「ち、近寄るなぁ~」
強烈になにかを拒絶する声。
サトウに様子を見てくると携帯で伝えたが、足の動きは鈍く気持ちに体がついてこない。
宮路由貴の入って行った家には門などはなく、半径30メートルをロックガーデンが囲み、近隣との接触を拒んでいる。
岩石を土手のように敷き詰め、階段状に積み上げられた岩の間からは雑草が日光を浴びようと背伸びしている。
意図的に生えさせたものなのか、所々に苔がこびりついて原田は足を滑らせ、躓きそうになりながらも段上の家に辿り着いた。