吸血鬼は淫らな舞台を見る
サトウがAK地区に配属されてから“奴ら”が事件に関わった証拠を掴んだことはない。
“奴らは絶対、人間に手を出さない”が常識になりつつある。
すでに現場保存作業を終えた鑑識課で巡査課長の安本がリビングにやってきてサトウに声をかけてきた。
「判別するのに2週間はかかる」
心なしか小さい声で報告をする。
「被害者のDNAと一致しない血痕を探すのにそんなに時間がかかるのか?」
サトウは年上の安本に穏やかに注文をつけた。
指紋偽装などたやすい世の中になって一番信憑性のある証拠は血液。
「なるべく早く報告できるようにする」
安本は額の冷や汗を拭った。