吸血鬼は淫らな舞台を見る
タクシーの運転手に刺青のとおりに住所を告げた。
瑠諏がタクシーを降りたのはすでに店を畳んで4年が経ち、AK地区ではすっかり忘れ去られた存在の地下にあるカフェの前。
上部が8階建てで建築会社などの事務所が入っているが、ほとんどのフロアは空きになっている。
コスプレしたメイドが接客するなどあらゆる趣向で持て成すAK地区の店に対抗して隠れ家的な癒しを目指し、夜はお酒も出して本物の大人を呼び込むつもりがあまり繁盛しなかったらしい。
大人ひとりがやっと通れるコンクリート打ちっ放しの地下へ伸びる階段を見て、瑠諏は脳の片隅に残っている記憶と照合して下りていく。