吸血鬼は淫らな舞台を見る


 お腹が妊婦のように膨らむ。


「やめろぉ~」

 絶叫し、不快な疲労感だけを残して夢から覚めた。


 ピクッと体を震わせ、背筋を伸ばし、痙攣して上半身をバネ仕掛けの人形のように跳ね上げる。


 激しいときはスツールから落ちたこともあった。


 本来吸血鬼は夢を見るのか?


 本当に夢なのか?


 寝ているときに唇を噛んでしまい、無意識のうちに血を舐めて自分の過去の舞台を見せられているのではと思ったこともある。


 でも、劇場の座席に座っている感覚がないことから夢に間違いないだろう。
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