吸血鬼は淫らな舞台を見る
降ろされた旧KZ工場は3年前まで石油プラントだった。
油を精製するステンレスの素肌をむき出したタワーが乱立しているほか、白い煙を空に刻んでいたはずの煙突は茫然と月を眺め、外付けの階段は来ることのない従業員を待っている。
錆びた引込み線は最盛期のときには忙しなく貨物列車が行き来していたことだろう。
タクシーが去ると寒々とした潮風が瑠諏の頬を撫でた。
西側の一番高い煙突を目指したが、どれも同じような高さ。
とりあえず西に向かって進んでみる。