吸血鬼は淫らな舞台を見る


「そうだ!あなたが替わりにやればいいじゃない」

 女がパチンと手を叩き、自らの閃きに酔って提案してもジョン・ドゥは顔色ひとつ変えなかった。


 瑠諏の棲家に着くまで車内には女の独り言しか流れない。


「待っててね」

 女はウインクして車のドアを開けた。


「おれは二度と会いたくない」

 ジョン・ドゥが久々に口を開く。


「あら、そんな言葉を男から言うもんじゃないわ」

 女は車を降りてドアを閉めた。
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