吸血鬼は淫らな舞台を見る


 瑠諏は新しい朝を迎えた。


 頭をもたげると頭痛がして思わず顔をしかめる。


 カウンターに伏せていた頬やこめかみではなく、後頭部に熱を感じる。


 なにがあったのか思い出せない。


 新しい記憶からどんどん失われていく恐怖を瑠諏は感じていた。


 立ち上がると視界が揺れた。


 頭痛からくるものではなく、動かすたびに首、肘、膝、背中など体中の関節と筋肉が“助けてくれ!”と叫んでいる。
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