吸血鬼は淫らな舞台を見る
『AK地区LJ通り53番地にある村田自動車修理工場だ』
「すぐ向かいます」
『待ってるぞ』
諏諏が受話器をフックに落とすとチンと軽やかな音が鳴った。
宮路由貴……典型的な和風美人といった感じの顔がぼんやり浮かんではきたが、事件の概要まで記憶が届かない。
吸血鬼が記憶障害になるなんて……。
瑠諏は苦笑いを引きずりながら棲家を出た。
新しい情報に汚染されたためか、血液バックを飲むことを忘れていた。