吸血鬼は淫らな舞台を見る


「ねぇ~ひとつもらっていい?」

 由貴が猫なで声でおねだりしてくる。

 彼女の頭の中は血を飲みたいという要求だけで、どうやって集めたのかは問題視していない様子。


 瑠諏が試験管を見詰めながら言う。

「この血は私が生まれた当時に採取したもので、舐めれば生みの親がわかるかもしれないんです」


「そうなの」

 由貴が生返事でかえす。


「あなたの言ったことが正しければ、連邦捜査官を殺してないということを信じましょう」


「やっぱり私の血を吸うと頭がパニックになるの?」


 由貴の質問に瑠諏は鼻で笑って答えると、試験管を強く握って温めた。
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