吸血鬼は淫らな舞台を見る
「吸血鬼の低い体温だと時間がかかるわよ」
「そうですね」
瑠諏は試験管をバー・カウンターの角で叩き、ガラス片を払ってからアイス状に固まった赤い棒の一部を口に運ぼうとしたところで動きをとめた。
「意識が飛んでいる間、襲わないでくださいね」
瑠諏がざわと睨むような芝居をして注意を促した。
「自信ないわ」
由貴は悪戯っぽく微笑む。
「飲みたければいくつでもどうぞ」
やっとおねだりの要求に答えてくれたことに感謝して由貴は瑠諏の腕にしがみついた。
赤いアイスは瑠諏の舌の上でゆっくり溶けていった。