吸血鬼は淫らな舞台を見る


 怪物は透明な粘性の液体で保護された卵を口から吐き出した。


 卵の殻が隆起して凸凹を作り、まるで自ら呼吸しているかのような動きを繰り返す。


 殻が割れ、中から「ひっく、ひっく」と息を細かく吸い込む泣き声が聞こえる。


 篠田レミは殻を剥がし、赤ん坊を愛しそうに抱き上げてあやす。


 由貴の言ったことは本当だった。


 舞台に見切りをつけた瑠諏は目を閉じることにした。


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