吸血鬼は淫らな舞台を見る
堅牢な貨物用コンテナを間仕切り壁のように並べ、迷路になっている敷地内は子供たちがかくれんぼや秘密基地として利用するには絶好の場所。
ただし、夜になると野良猫の寝床として活用する以外に使い道はないと思われた。
男がその敷地内を訪れるとそれまで顔を出していた月が風で流されてきた雲によってすっぽり隠されてしまった。
海を挟んだ対岸にはオレンジ色の2基のクレーンがライトに照らされながら巨大な船体を急ピッチで組み立てているが、境界線でもあるかのように男が踏み入れた敷地にはぱたりと賑やかさが失せていた。