吸血鬼は淫らな舞台を見る
唯一、刑事部長の三宅だけが部下に目を光らせ、仕事中心の生活を好んでいるようだが、最近は席を外すことが多くなった。
意外と喫茶店にでも入ってコーヒーを飲んでくつろいでいるのかもしれない。
サトウは届けられたばかりの大きめの封筒からファイルを引っ張り出した。
「捜査資料なら郵便じゃなく電子メールで送ってもらえばいいじゃないですか」
原田が隣の席から資料をチラ見して生意気にもアドバイスしてくる。
「おれは有機ELの画面を眺めるよりも紙媒体の資料を読むほうが頭にスイスイ入ってくるんだよ。お前は自分の仕事をしてろ」
原田は亀のように首を縮め、パソコン画面に顔を向き直した。