吸血鬼は淫らな舞台を見る
一画に息を潜めて建っている古びた倉庫の前には高級そうなスーツを着た男がドアをふさぐようにして立っていた。
「来ました」
スーツを着た男が無線機に語りかけ、スピーカーから無愛想な声で『入れろ』とだけ指示されるとキィーと耳障りな音をさせてドアを開く。
スーツを着た男は中に入らず、ドアを閉めた。
32坪の平屋建て。
むき出しの鉄骨が三角屋根を支え、床は緑色の防塵塗装でツルツル。
靴底がキュッ、キュッと擦れる音が響くほど意外にも清掃が行き届いていた。