吸血鬼は淫らな舞台を見る


 サトウはあからさまに落胆した顔を見せるわけにはいかない。


 こんな田舎までやって来て汚いコンクリートの床を舐めてくれたのだから。


「自転車と帽子か……自転車に乗っているのなら7年前まで犯人はこの近辺に住んでいた奴だな」


「そうですね」


「自転車は世の中で一番出回っているアルファ社の302シリーズの旧タイプだろう。赤いBのロゴが入った帽子を売っている店をまず探してみるか」


「はい」


「付き合ってくれるのか?」


「私をここへ置き去りにするんですか?」

 瑠諏は人懐っこい笑みを浮かべ、さっきまでの疲れた表情を完全に消していた。
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