ブルーローズの恋人
「真那ちゃん、コレも美味しいよ」
「ん、有難う」
少しばかり身を乗り出して差し出されたベーグルサンドを齧る。
と、近くのテーブルに座っていた女子グループから声が上がった。
「えっ、あの人マジで女なの?」
「らしいよー、全然見えないでしょ? どっからどう見ても男だよねぇ」
多少声は潜められているものの隠そうという意思はあまり無いらしく、聞こえた内容に真那の身体が僅かに強張った。
「えー、結構綺麗なのにオカマって残念だねー」
「オカマは違うんじゃない? 元は女なんだから」
「あ、そっか。じゃあ何て言うの?」
他人の容姿をネタに盛り上がり始める彼女達は、真那に聞こえる事も気にせず耳障りな笑い声を上げる。
――ああ、またか。
そう思いながら、吐きそうになる溜め息を押さえてアイスカフェオレを飲む。
大勢の人が居る大学内で此の手の話題は嫌という程耳にしてきた真那は、煩わしいと感じながらもどうしようもない現実を諦めていた。