あたしのトナリ。
プロローグ
目が覚めると見慣れない天井、明らかに自分のものじゃない匂い、糊のきいてくたびれてないシーツ、そして自分は、素っ裸。
あたしはズキズキと痛む頭と何故か痛む腰を擦りながら昨日のことを思い出そうとした。
確か昨日は店長の婚約おめでとう会と称して居酒屋で店長や社員さん、他のスタッフたちと一緒に飲んでいたはず。
入社したときから面倒みてくれて、お父さんのようで大好きだった店長が結婚するって聞いてあたしは嬉しいようで寂しいようで、ずーっと店長の側でカシオレを呷ってた。
主役であるはずの店長は何故か浮かない顔してたけど最終的にはいつもの温かい笑顔でみんなから祝われていた。
そう、ここまでは思い出せる。
「その後どうしたんだっけ……?」
あたしはお酒に弱くてカシオレしか飲めない。そうだ思い出した、確か隣にいた先輩スタッフの慧子さんが、
『今日くらいパーッと飲みな飲みな! 店長のおめでとう会でもあるけど裏ではあんたの失恋慰め会でもあるんだから。この機会に日本酒とかどう?』
とかなんとか言って周りの先輩スタッフたちにも煽られて日本酒を飲まされて、それから、
「それから……思い出せない」
飲み会の次の日の朝起きたら知らない部屋で素っ裸、だなんてテンプレ展開もいいところすぎて突っ込む気すら起きない。まさか自分の身に起こるだなんてこの20年間考えたこともないし、多分少女漫画の主人公も真っ青だ。
ってことはちょっと待って、この展開通りに行くと素っ裸のあたしの隣には同じく素っ裸の男の人が寝てる、ってことで……
あたしは思わずごくりと息を飲んだ。今まで怖くて隣を直視することは出来なかったけど、確実に誰かがいる。寝息をたててそりゃあもう気持ちよさそうに寝てる、男の人が。
昨日の流れからいって100パーセント見知らぬ人、ってことはありえない。
じゃあ誰だ。商品管理の武田さんか、それとも本社事業部の豊崎さん!?
ドラマや漫画くらいでしか見たことないぶっ飛んだ状況にあたしの頭がキャパオーバーして逆に冷静に物事を考えてた。人間追いつめられると何をするかわからない、ってよく言うけど反対に冷静にもなれるらしい。後から思うとあたし、超恐ろしい。
その時隣の塊がもぞもぞと動く気配がしてあたしは一瞬フリーズした。
(ヤバイ、起きた!?)
だけどすぐにまた寝息が聞こえてきたから、どうやら寝返りをうっただけらしい。
……寝返りをうった、ってことは、まさか今こっちに顔を向けてるってこと!?
ここにきていきなり心臓がバクバク言い出した。というより全身が心臓になっちゃったみたいでなんだか熱い。血液がドクドクと流れるのを感じる。
恐る恐る、ギギギと壊れかけのロボットのようにあたしは隣を見た。願わくば、面倒くさくない人でありますように!
「っ――!!?」
思わず叫びたくなったけどあたしは声に出すことが出来なかった。
だって、だって、商品管理の武田さんでも本社事業部の豊崎さんでもなくて――!
隣で寝ていたのは、店長の宮地さんでした。
あたしと同じく素っ裸で、左手の薬指には眩く光る銀色の指輪をつけて。
あたしはズキズキと痛む頭と何故か痛む腰を擦りながら昨日のことを思い出そうとした。
確か昨日は店長の婚約おめでとう会と称して居酒屋で店長や社員さん、他のスタッフたちと一緒に飲んでいたはず。
入社したときから面倒みてくれて、お父さんのようで大好きだった店長が結婚するって聞いてあたしは嬉しいようで寂しいようで、ずーっと店長の側でカシオレを呷ってた。
主役であるはずの店長は何故か浮かない顔してたけど最終的にはいつもの温かい笑顔でみんなから祝われていた。
そう、ここまでは思い出せる。
「その後どうしたんだっけ……?」
あたしはお酒に弱くてカシオレしか飲めない。そうだ思い出した、確か隣にいた先輩スタッフの慧子さんが、
『今日くらいパーッと飲みな飲みな! 店長のおめでとう会でもあるけど裏ではあんたの失恋慰め会でもあるんだから。この機会に日本酒とかどう?』
とかなんとか言って周りの先輩スタッフたちにも煽られて日本酒を飲まされて、それから、
「それから……思い出せない」
飲み会の次の日の朝起きたら知らない部屋で素っ裸、だなんてテンプレ展開もいいところすぎて突っ込む気すら起きない。まさか自分の身に起こるだなんてこの20年間考えたこともないし、多分少女漫画の主人公も真っ青だ。
ってことはちょっと待って、この展開通りに行くと素っ裸のあたしの隣には同じく素っ裸の男の人が寝てる、ってことで……
あたしは思わずごくりと息を飲んだ。今まで怖くて隣を直視することは出来なかったけど、確実に誰かがいる。寝息をたててそりゃあもう気持ちよさそうに寝てる、男の人が。
昨日の流れからいって100パーセント見知らぬ人、ってことはありえない。
じゃあ誰だ。商品管理の武田さんか、それとも本社事業部の豊崎さん!?
ドラマや漫画くらいでしか見たことないぶっ飛んだ状況にあたしの頭がキャパオーバーして逆に冷静に物事を考えてた。人間追いつめられると何をするかわからない、ってよく言うけど反対に冷静にもなれるらしい。後から思うとあたし、超恐ろしい。
その時隣の塊がもぞもぞと動く気配がしてあたしは一瞬フリーズした。
(ヤバイ、起きた!?)
だけどすぐにまた寝息が聞こえてきたから、どうやら寝返りをうっただけらしい。
……寝返りをうった、ってことは、まさか今こっちに顔を向けてるってこと!?
ここにきていきなり心臓がバクバク言い出した。というより全身が心臓になっちゃったみたいでなんだか熱い。血液がドクドクと流れるのを感じる。
恐る恐る、ギギギと壊れかけのロボットのようにあたしは隣を見た。願わくば、面倒くさくない人でありますように!
「っ――!!?」
思わず叫びたくなったけどあたしは声に出すことが出来なかった。
だって、だって、商品管理の武田さんでも本社事業部の豊崎さんでもなくて――!
隣で寝ていたのは、店長の宮地さんでした。
あたしと同じく素っ裸で、左手の薬指には眩く光る銀色の指輪をつけて。
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