あたしのトナリ。
サアア、と自分の顔から血の気が引いていくのがわかった。これは完全にあたしの失敗って言うか、落ち度のせいじゃん!
「ちょっと麻衣、大丈夫? 顔真っ青だよ」
「大、丈夫……です、宮地さんに失礼なことしちゃったなあって思っただけで」
「本当にぃ~? 無理はしちゃ駄目だよぉ。何かあったら、私たちに言ってね」
 心の底から心配してくれる慧子さんと由香里さんに本当のことは絶対に言えない。
 だってもしかしたら(っていうかほぼ確定)取り返しのつかない間違いをしちゃったかもしれないのであって……!
そんなことをぐるぐる考えていると、バックのドアが開く気配がした。
「あ、店長おはようございます……って風邪ですか? 顔色酷いですよ?」
 慧子さんの言葉にはっと入口のほうを見ると、宮地さんが出勤してきたところだった。ちょっと、なんでこんな時に!
「おはよう、高橋さん、千葉さん、桜井さん。ちょっと眠れなくてね……」
「てんちょおもぉ、麻衣ちゃんも揃って調子悪いなんて、2人で何かあったみたい! あやしい~」
 由香里さんの爆弾発言にあたしはピキンとその場に固まった。天然そうに見えて時々鋭いから、由香里さんを出し抜くことは出来そうにない。
 その時、ガタン! と派手な音がして、そのほうを見ると宮地さんがドアの角に小指をぶつけたらしくその場で飛び跳ねていた。明らかに怪しい。
「店長、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫……多分……そうだ、桜井さん、確か今日って通しだったよね?」
 ウチのお店は早番・遅番のシフト制だけど時々通しがある。大体ローテーションで決まって、今日はあたしが通しの当番だった。
「はい、そうです……」
「ちょっと話があるから、終礼の後ここに残ってて」
 視線も合わせずにそう言うと、宮地さんはさっさとフロアのほうに出て行ってしまった。
「麻衣ちゃぁん、何かやらかした?」
「な、何もやらかしてませんっ!!」
 でも絶対、宮地さんの話って言うのはきっと一昨日の夜のことで。
 気になって気になって、その日の仕事はどうしても力が入らなかった。
< 9 / 9 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop