あの頃…
第1章
とある日常
季節は本格的に春になり、風が温かみを増してきていた
見上げれば高い空が広がるようになった
始まりの季節、春
桜が咲き誇り、散って、新緑が青々と芽生えるこの季節が、立花しるふは大好きだ
だって、何もかもが始まった季節だから
「よしっと」
鏡の前に立つしるふの耳には、蝶の形をしたイヤリングが揺れる
一歩引いて全身を見直して満足そうに頷く
ゆるめに巻いた髪も前髪のわけ具合もばっちりだ
首にかけられたネックレスはついつい手を伸ばしてしまった深海ブルーと呼ばれる天然石
青と言ってしまうにはもったいないほど深い青
最近のしるふのトレンドなのだけれど、もちろんあいつは無反応
新しく買ったということすら気づいているか怪しい
よくもそんなんで3年ももったものだと感嘆しながらいつもより高めのヒールに足を通す
4年暮らした古いアパートのドアを開ければ春の温かな風
ふと見上げた空に広がるのはオレンジ色の夕焼け
4年たっても変わらない風景
でも、自分にとってはとても密の濃い4年間だった
そう、あれは、4年前の春ー
見上げれば高い空が広がるようになった
始まりの季節、春
桜が咲き誇り、散って、新緑が青々と芽生えるこの季節が、立花しるふは大好きだ
だって、何もかもが始まった季節だから
「よしっと」
鏡の前に立つしるふの耳には、蝶の形をしたイヤリングが揺れる
一歩引いて全身を見直して満足そうに頷く
ゆるめに巻いた髪も前髪のわけ具合もばっちりだ
首にかけられたネックレスはついつい手を伸ばしてしまった深海ブルーと呼ばれる天然石
青と言ってしまうにはもったいないほど深い青
最近のしるふのトレンドなのだけれど、もちろんあいつは無反応
新しく買ったということすら気づいているか怪しい
よくもそんなんで3年ももったものだと感嘆しながらいつもより高めのヒールに足を通す
4年暮らした古いアパートのドアを開ければ春の温かな風
ふと見上げた空に広がるのはオレンジ色の夕焼け
4年たっても変わらない風景
でも、自分にとってはとても密の濃い4年間だった
そう、あれは、4年前の春ー
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