あの頃…
「黒崎」

口を開きかけたしるふの背後から落ち着いた低い声がした

振り返れば何度か立ち話をしたことのある内科医の塔矢医師

「珍しいな、お前がここにいるなんて」

「整形に行ったついでにな」

「そうか」

「荒井なら」

そう言ってソファの方を指さす

わかってるという様に頷く塔矢に荒井が目を開ける

「よう、塔矢。それ、噂の研修だとさ。お気に入りだ、手出すなよ」

「立花です!!」

勘発入れず訂正するが、笑い声が聞こえるだけで取り合っては貰えない

「お気に入りね」

あながち間違っちゃいないなー

なんてつぶやきながら塔矢が階段を下りていく

その背に一瞥を投げた海斗が階段を上り始めると

それに気がついたしるふが慌ててその後を追う

「だからもう少しゆっくり歩いてくださいってば!!」

遠くにしるふのそんな声が聞こえて、荒井と二人思わず笑ってしまった

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