あの頃…
「うん」

言っていることが真逆で

でも思っていることは同じな二人が面白くて

絶対にここに帰って来ようとここに誓う

たとえいつになっても

きっと二人は待っていてくれるから

その時この二人の距離はどれくらい縮まっているのだろうか

「じゃあ、またね。黒崎先生、立花先生」

塔矢先生と荒井先生によろしく

そう言って駆けていく彩良の笑顔は今までで一番綺麗だった

「…行っちゃいましたね」

少ししんみりとした声が小さく響く

「何言ってるんだ。いつまでもいるようなところじゃないだろう」

真っ白な病室なんて

「彩良ちゃんも見送ったし、私も行こうかな」

内科での研修はほんの数日しか残っていない

きっと海斗とこうして話すのはここに戻ってくるときまでお預け

それがとても名残惜しくて

でもそんなこと言える間柄じゃなくて

「黒崎先生。行ってきます」

「ああ」

見下ろしてくる瞳は、やっぱり優しさを帯びていた
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