あの頃…
逢いたい

そう思ったのはいつの自分だったか

たとえ仕事の話でもいい、ただあの声を聞きたくて

あの瞳を向けてほしくて

ぎゅっと握りしめた鞄片手に急ぎ足で会場を出る

衝動的に走り出すのがじゃじゃ馬だ

だからそうなってみるのも悪くない

広いホールの階段へを続く方向

そこに彼の背がある

「黒崎先生!!」

数人の人をよけながら呼び止めれば、海斗はすぐに足を止めてくれる

「立花」

向けられた瞳は少し驚いているように見えた

「来てたのか」

呼び止めて何を話すかなんて考えていなかった

だから海斗がそう聞いてくれたのにとても救われた

「はい。休みなんです」

黒崎先生もですか

「久々の休日」

そう返す彼は待つそぶりを見せた後にゆっくりと歩き出す

隣に並んで覚えるのは安心感

いつの間にか早いと感じなくなった海斗の歩調
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