あの頃…
そのゆっくりになった歩調は何を表すのだろう

そっと見上げれば海斗の端正な横顔

落ち着いた漆黒の瞳

肩は触れ合わない

でも、それはとても近い距離

このもどかしい関係を、距離をなんと表現したらいいのだろう

俗にいう友人以上恋人未満というやつだろうか



もっと特別だ

そう、待っていて欲しいと言えば待ってると答えてくれるほど

「黒崎先生」

市民ホールを出れば人はまばらに去っていく

向けられる漆黒の瞳が、続きを促してくる

「皆元気ですか」

「相変わらず」

短い回答

「そうですか」

それでもいい

隣に居ることを許してくれることがうれしいから

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