あの頃…
第6章

とある呼び出し

ふと外を見るとすでに暗い

コートが手放せない時期になった

ぼんやりと浮かび上がる街灯を眺めながら

「今年も終わりかあ」

ふとつぶやく

かの有名な黒崎病院ERで始まった研修

その後内科、産婦人科、消化器外科などいろいろと廻ってきた

忙しかったし、たくさんのことがあった一年だった

言い換えればとても充実した一年

後は、

「あの背中がなあ」

近いようで遠いようで

いつもいつも手を伸ばすのをためらってしまう

きっと伸ばした手が空を切るのが怖いのだ

研修医以上に大切にしてくれているのかいまいち自信がない

ああ、じれったい

じれったくしているのは自分だし、この関係を壊すのが怖いというのが本音だったりするのだけれど

それでも時々すごくすごくじれったくなる

手を伸ばしてみようか、と思ってしまう時がある
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