あの頃…
「そうですか。それは幸いです」

すでに習慣化されたやりとり

海斗の言葉はいつだって決まっていてそれを気にした時期もあったけれど

要は特に変わりわなく、それを事細かに伝える必要がないだけなのだ

気になるなら顔を出せばいい、なんて思っているのかもしれない

「時間がないから単刀直入に聞く。今月24日空いてるか」

「ええっと……、空いてます、けど」

今月24日

つまり12月24日だ

俗にいうクリスマスイヴ

イルミネーションに彩られた街にこぞって恋人たちが繰り出す日

わざわざそんな日の予定を聞くってどういう魂胆だろう

今まで海斗に俗にいうデートとやらに誘われたことは、ない

誘ったことも、ない

そんなことしてる暇があるのなら少しは使えるようになれ、なんて言われるのが目に見えているから

これは、初デートのお誘いか、と考え付いたところで自分が握っているのが病院の電話であることに気がつく

海斗が私用で病院の電話を鳴らすだろうか

答えは、即、否

痺れを切らして電話してきた風では、残念ながらない

「ちょうどいい。その日黒崎病院に来い」
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