あの頃…
「クリスマスイヴ」

「知ってるんじゃないですか、ちゃんと」

じゃあ、その日に女性を誘うってどういうことかわかってますか

「予定、ないんだろう」

電話を介した向こう

返ってくる言葉は、声音はいつだって冷静だ

「ありません」

「じゃあ、問題ない」

「問題大有りです。黒崎先生。もしかしたらこの数週間でお誘いがかかるかもしれないじゃないですか」

その時元居た病院に手伝いに行く予定があるから、なんて言ったらその先有りませんよ

即仕事人間認定だ

「どうしてくれるんですか、私の輝かしい未来」

「そんな融通の利かない男捨てておけ」

ろくな未来に繋がりはしない

「そもそもキリシタンでもないのになぜクリスマスを祝う必要がある。しかも前日に何の価値が」

そう言われてしまうとただデパート商戦にうまく乗せられていると思えなくもないが

そう言う問題ではないのだと乙女心がつぶやく

「…少しでも期待した私がばかでした」

「あ?」

「なんでもありません」
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