あの頃…
夜の病院内は暗い

きっと節電のためなのだろうが、

このうす暗い感じが一番苦手でどうにかしてほしいと勤務当初から思っていた

「うー、なんで一人できちゃったんだろう」

特に今日はクリスマスということもあってかいつもよりも殺伐としているようだ

5時を過ぎたくらいだというのに人気がない

思わず腕で自らのそれを抱く

ああ、もう本当に我が道を行く人だ

ふらりと消えた海斗を恨めしく思いながら慎重に足を進める

怖くなんて、ない

絶対に

でも、不気味だと思うのは、仕方ない

そしてこういう時ほど感覚は研ぎ澄まされて、小さな音にも反応してしまう

まさか背後から呼び止められるなんて

角から誰かが現れるなんて絶対に考えたくない

「立花」

「ひっ」

かけられた声に一歩飛びのきながら振り返る

「…っ黒崎先生!驚かせないで下さいよ!」

ふりかえれば探していた漆黒の瞳が見下ろしていた

さも不思議そうな顔をして
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