あの頃…
「何そんなに驚いてるんだ」

心臓に悪い

なんて少しも驚いてないような顔をして言わないでほしい

「突然背後から話しかけられたら誰だって驚きますよ!しかもこんなくらい場所で視界が悪くて!」

せめて前から現れて下さい!

じっとりと睨んでくるしるふの瞳が少し潤んでいる

「良くわからんが、悪い」

前から現れようと驚いたんじゃないか、なんて野暮なことは心にしまっておく

「だいたい、手伝いに来いって言っておいて、いざ自分は他の医局に言ってるって反則ですよ」

時間指定したの黒崎先生じゃないですか

「ああ。ちょっと塔矢に用があって」

予定ではしるふが来る前に戻るはずだった

予定では

「…外すごく寒いし、町はどこもクリスマス気分だし。そんな日に乙女を呼び出したんです、今度ホテルのディナー奢ってください」

「ケーキはどうした」

予定がないから行くといったのはしるふだったと記憶している

「それは頭金です」

「立花の、そういうところがすごいと思う」

それは褒めか

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