あの頃…
「…黒崎先生、いい加減にしてくださいね」

じっとりと引く声を出せば

「悪い、悪い」

あまりにも意外すぎて

いや、らしい、かもしれない

思い返せば夜になると途端に他局へ行くことが減っていたように思う

海斗や神宮寺の後ろに理由をつけてついてきていたのは、出来るだけ一人で歩く回数を減らすためか

「立花は霊感ないから何も怖がることないと思うけど」

「別に霊は信じてません。そしてばかにされているのか慰められているのか理解に苦しみます」

「じゃあ、何も怖がる必要ないじゃないか。見えないなら前を通り過ぎようと背後から肩を叩かれようと気が付かないだろうに」

なんて至極真面目な顔で言わないでほしい

「それって私が鈍いってことですか?」

「いや、真面目に恐怖への対処法を…」

「だから私は怖がりじゃありませんから!!」

ほら、もう!医局に戻りますよ!!

くるりと踵を返してERの方へ歩き出す

「立花」

数歩行くと背後から静かな低い声が呼び止める
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