あの頃…
「あ、莉彩。ただいま」

「なんか一端の医者って感じになっちゃって」

笑いながらしるふの白衣姿をじっくりと拝む

「あとで写真撮らせてよ。黒崎病院マドンナ帰還って謳ったら高く売れるわ」

「ちょっと」

友人を何に使うつもりなんだ

「それは置いといてさ、黒崎先生は?」

一番逢いたかった存在

きっとその瞳はうれしさを映してなんかくれないけれど

それでもあの落ち着いた漆黒の瞳に

あの低い心地いい声音に

今すぐ逢いたい

「ああ、黒崎先生ならアメリカに行っちゃったわよ」

「アメリカ!?」

なんで!?

「えっと、確か」

「前にアメリカで担当していた患者さんが再手術することが決まってね。どうしても黒崎先生にって黒崎君から連絡があって飛んで行っちゃったわ」

莉彩の言葉を引き継いだのは神宮寺

「まったく、黒崎先生一人抜けることがどれだけ大変か知ってるのかしら」

そういって撫でるのは、少しホコリをかぶり始めた彼のパソコン
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