あの頃…
医局で新しいコーヒーを落としていると、盛大にドアがなる

勢いよく開かれ、勢いよく閉められたドアの音に医局にいた全員が驚いたように顔を上げたのは言うまでもない

しかもその先に居たのがかわいがっている研修医だとわかったらさらに驚くしかない

コーヒーを丁度手に持った海斗は、ずかずかと歩いて椅子に座るしるふを黙って見送る

そっとコーヒーに口をつけ、視線を移せば神宮寺とかち合う

「何かあったのか」

背後から話しかければ

「何もありません!!」

即答、響く声は明らかに怒っている

「なら、いいけど」

触らぬ神に、祟りなし、と自分の席に向かう

本当にころころと表情が変わる、と思いながら


それから数日、弱弱しく笑う佐々木を見るたびにしるふの堪忍袋は徐々にはちきれそうになっていった

怒ってますオーラを隠しもせず医局に居るものだから

ここ数日の医局の雰囲気は最悪と言っても良い

と、息をつきながら海斗は思う

しかも神宮寺に

「指導医なんだからちゃんと相談乗ってあげてね」

なんて笑顔で言われ、さらにため息が漏れる
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