あの頃…
「納得してくれないと困る」

はっきり言えば正確な時期など知らない

始まりは、向けられた瞳が変わらなかった時

でもあの真っ白な存在が、こんなに大切になったのはいつだったか

まさかそれを今でもこうして抱えているなんて誰が想像しただろう

「私より前って研修のはじめの方、ってことになるのよね」

そういうしるふはなんとなくあの夜の海斗の優しさだと感じている

もしかしたらそれ以上前に始まっていたのかもしれないけれど

「100歩譲って海斗が私より先に私のことを好きになってたとする、」

ふと見上げてくる瞳は少し不満げ

「なんで付き合い始めたのが一年後なの」

そしてなんでこんなに追われた感がないの

「いったろう、立花が医者になるまで待つって決めてたって」

追いかけてないんだ、そんなの当り前だろう

見下ろしてくる漆黒の瞳は、さも当然だと告げている

「ちょっと待って海斗。女は想われてなんぼなのよ」

追うより追われたい、それが真実
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