あの頃…
「私のちょっと遅い青春返してよ」

ちょっと遅い青春

思わず眉をひそめた海斗に

「そこ、気にするところ違うからね。だいたい、私がこうして海斗と付き合ってるからいいもののそうこうしてるうちに私が他の人と付き合っちゃったらどうするつもりだったのよ」

海斗はそういう危機感が足りないのよ

「ああ、長谷川とか内科の佐藤とか」

長谷川はまだしも佐藤は少し注意するべき人物だったかもしれない

「そうよ。他の病院で研修してる間に、とか考えないの?」

「しるふなら大丈夫かなと」

「…それは、どういう意味よ」

じっとりと見上げるのは、海斗が期待通りの回答をしてくることなんてほとんどないから

「しるふは鈍感だから」

どんなに追いかけられてもきっとその天然さで切り抜けるに違いない

あの時のしるふは医者になることに手いっぱいでそんなこと全く気にしていなかったのだから

「ああ!もう!やっぱり海斗だ!」

期待して損した!

たとえその口が期待に応えてくれないと分かっていてもそれでも淡い期待を抱いてしまう女心
< 171 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop