あの頃…
「ねえ、海斗」

見上げれば少し沈んだ夕日の色をした空

綺麗なオレンジ色に紫が混ざる

「なんだ」

問うてくる声は、口調は、タイミングは、何も変わらない

「悔しいんだけどさ、大好きだ」

見上げれば知っている、と満足そうに返される言葉

繋がれた手は、もうほどけたりしないから

なでてくれる手がこんなにも優しいから

かけられる声だけでこんなにも気持ちがわかるから

ずっと、ずっと歩いて行こう

「愛してる」

たったそれだけでこんなにも笑顔になってくれるのなら

微笑めば、微笑み返してくれるのなら

見上げてくる瞳がいつまでも無邪気であるのなら

願わくば、その笑顔を絶やさずに

願わくば、この恋が、この愛が

ずっとずっとこの手にありますように







あの頃     -完-


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