あの頃…

バンっー

ドダドダと階段をかけ上げる音の後に響いた重い音

医局にいた海斗と神宮寺医局長が反射的に顔を出入り口の方に向ける

「立花、こないだから思ってたんだが、医局を壊すなよ」

すでに私服姿で椅子にもたれている海斗の言葉だ

「こんなことじゃ黒崎病院は壊れません!!それより、お疲れ様でした!!お先します!!」

畳みかけるように言葉を残し、医局をすごい勢いで出ていくしるふの背を呼び止める

「立花!」

「けり付けるんです!邪魔しないで下さい!!」

振り向いたのは一瞬で、そのすぐ後にドアが激しい音を立てる

「立花!ちょっと待て!!」

言葉はドアの音にかき消されてたぶん届いていない

後を追って医局を飛び出せば、そこに彼女の姿はすでになくて

「あの、ばか」

額に手を当てて思わずつぶやいた

一度大きく息をついて向かうのは、ICU

「佐々木さん」

いつもとは違う声に呼ばれて少し驚いたように顔を上げた佐々木と視線があう

「黒崎先生」

「うちのばか。どこに向かったかわかりますか」