あの頃…
ちなみにこのしるふの天然、鈍感さは自覚のあるシスコン姉・紗雪の鉄壁守備の産物である

さすが末っ子

姉と兄に見守られ、真っ直ぐも無垢に、少々初心に育ってしまったらしい

「ごめんねー、海斗君。高校の時からしるふに寄ってくる男って多くてさ、あんなのに大切な妹渡すかーって叩き落としてたら結果ああよ」

何時ぞや立ち寄ったしるふの実家でつぶやかれた紗雪の談である

その姿が、その効力がとてもよく想像できて

ああ、と苦笑すると共に、ああ、でも男として彼氏としてそれは最大級の感謝に値すると

冗談交じりに、けれど声音は真剣に紗雪に頭を垂れた

「海斗君のそういうところ大好きよー」

なんていう紗雪のつぶやきにしるふが

「海斗、浮気」

と睨んできて、その後少々根に持っていたことも含めいい思い出と言える


なんてことを思い出しながらカルテを書いていたら

気が付かないうちにふと嘆息していたらしい

「黒崎先生、ため息つかないで下さいよ」

背後から聞きなれた声がした

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