あの頃…
「さすがに3年も経つと」

「うん」

「その鈍感さを矯正する気も失せてくるんだが、だからと言って放置しておくつもりはこちとらなくて」

そんなことをしたらここぞとばかりに男が群がってくるのは想像に難くない

「だから逐一忠告してるのであって、頼むからその忠告だけは素直に聞いててくれると助かる」

そう、この忠告を心に留めておいてくれれば

あとは自分が叩き落とす

それが患者だろうが、取引先の社員だろうが

そんなことで痛手を被る黒崎病院ではない

「海斗って、時々過保護だよねー」

いつもは淡泊でさ、ろくに電話もメールもくれないってのに

まあ、それが海斗スタイルなんだろうけど

小さく肩を伸ばしながら天井に向かってつぶやく

「まあ、同じ轍は踏みたくないからな」

そんな小さなつぶやきはしるふには聞こえない

思い出すのはまだ付き合い始めたころのストーカー事件

しるふの天然さと鈍感さを痛いほど痛感したあの事件

あんな思いをするくらいなら

あんな顔をさせるくらいなら

少々うるさいと思われるくらいどうってことない
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