あの頃…
付き合った人がいない訳ではない

一応

でもこんなにうまく立ち振る舞えないものだっただろうかと

今更ながらに自分の不器用さと初心さを痛感する毎日だ

「こないだ休みで門前払い食らったお店覚えてます?」

「ああ、角のところのピザ屋だろう」

「そうそう、今日そこどうですか。明日休みだし」

「じゃあ、そこで」

「…黒崎先生っていっつもそれですよね」

たまにはあそこ行きたいとかここは?とか今日は和食な気分とか言ってくださいよ

私のレパートリーが尽きます

少し瞳を細めて見上げてくるしるふに返すのは苦笑

「次は考えておく」

そんなこと言われてもきっとこの姫君に本心は伝わらない

食べたいものを食べている時のしるふを見ているのが何より楽しいなんて

それほど落ちているなんて

誰がわかるだろう

何気なく手を取れば、一瞬驚いたようにしるふが硬くなるのが伝わってくる

さあ、どこからどう攻めようか

それが最近の目下の悩みごとである
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