あの頃…
「戸田って男はどこ!」

そんなに広くない店内

いい感じに声が響く

店内にいた何人かの男女がカウンター席にいる男に視線を送る

明るい茶髪に耳に数個のピアス

人懐っこそうな顔をした20代前半の男だ

「あなたが戸田?」

隣まで行けば安っぽい香水と煙草の臭いが混ざって不快の何物でもない

「そうだけど。誰?」

「佐々木さん、知ってるわよね。あなたの彼女だった」

向けられた視線がけだるそうで今過ぎにでも殴ってやろうかとふと思う

「ああ。あいつね。どうかしたの」

あざ笑うかのような口調

「佐々木さんがあなたと話したいことがあるの。だから来て」

「却下。別れた女のとこにいくばか居る?」

「あなたに選択権なんてないわ。妊娠させた上にやぶ医者紹介してお金も負担しないあんたなんかに選ぶ権利なんてないのよ」

「今更より戻そうとか遅いし、重いし」

面倒くさいし

「ばかじゃないの。あんたとより戻した女なんていないわよ」

笑わせないで
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