あの頃…
予約済み、その言葉が何を差すかわからないほど子供ではない

こちらこそすみません

申し訳なさそうに頭を下げて島田が去っていく

「島田さん!風邪、良くならなかったらまた来てくださいね!!」

遠ざかっていく背にその声は届いただろうか

風の抜けるさらさらとした音だけが過ぎていく

ふと見上げれば、少し不機嫌そうに見下ろしてくる漆黒の瞳

「…何かおっしゃりたいことがあるならどうぞ」

「言わないといけないほどバカなのか」

「…。いいえ。黒崎先生に八つ当たりされてもこらえる位の気概は持ち合わせています」

ただ、口に出したほうがすっきりとするかと思いまして

「じゃあ、一つだけ」

「はい」

「お人よし」

あと鈍感

「…、一つじゃないじゃないですか。一黒崎病院従業員として黒崎病院の経営を支えようと思っただけです」

次来るのが気まずいとかかわいそうじゃないですか

「なめるな。患者の一人二人が来なくなったくらいじゃ揺らがない」
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