あの頃…
「なんで…」

言いかけると海斗の漆黒の瞳が一瞬向けられて、思わず黙る

怒っている、ような気がした

「あんた誰」

「答える必要ないだろう」

それと

「これは返してもらう」

これ、と言われたのは自分だ

もう少し言い方があるのではないかと独り思う

この状況で口をはさめるほど自分に度胸はないのだけれど

「悪いけど、俺が予約済み。それとも何?彼氏とかだったりした?」

「悪いが女に不自由はしてない」

海斗の言葉にそりゃそうだろうさ、と心の中で思うしるふの隣で

ふっと不敵に海斗の口角が上がる

「俺が言っているうちに聞くべきだ。まさか関節を外されたくはないだろう?」

「勝気な女は好きだけど、お前みたいな男は嫌いだよ」

「気が合うな。俺も人生で一人そういうやつに関われば十分だ」

一瞬だったと思う

海斗が、戸田の腕をひねり上げ、店内に戸田の絶叫が響く

「-っ。おまっ」

「これ、お前が渡したんだろう」

痛みに床に転がる戸田に海斗が一枚の紙切れを見せる
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