あの頃…
「黒崎先生…!ちょっと待ってください!!」

夕日の中前を行く彼の背は、いつだって遠い

「黒崎先生ってば!!」

小走りに追いかけて二度呼べば、海斗が足を止めて振り返る

その目が、座っている、気がしてしるふも思わず足を止める

流れる沈黙

「…あの、どうしてここに?」

口を開いたのは、しるふだ

恐る恐る、伺う様に問う

手をつかまれたままだからこれ以上距離を取ることはできないけれど、できるだけ身を引く

「……どうして、だ?」

海斗が剣呑に眉を寄せ、いつもより低い声が響く

思わず半歩後ろに足を引く

今過ぎにだってここから逃げ出したい

でも海斗がそれを許さない

「待てと言ったのに無視して居なくなったばかはどこのどいつだ!?仮にも女だからと追いかけてきたのに口から出る言葉がどうして、だ!?」

このばか!!

「そんなにばかばか言うことないじゃないですか!!それと私は仮じゃなくて女です!!それに!黒崎先生に言ったら止めるじゃないですか!!患者のプライベートなことまで首突っ込むなとか言って!!」

だからあそこで止まるわけにはいかなかったんです!!



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