あの頃…
怒鳴られたからと言ってそのまま黙っているほどかわいい女ではない

「しかも!戸田連れて行くって佐々木さんと約束したのに。どうしてくれるんですか!!」

出てきちゃったじゃないですか!!

警察まで呼んで!!

「佐々木さんならもう大丈夫だ」

一転、海斗の声が静かなものに戻る

「ど…」

いうことですか

「おせっかいな誰かさんが毎日毎日励ましてたのが功を奏したんだろう」

もう吹っ切れてるさ

「…おせっかいは余計です」

誉められている気がしない

「だから止まれと言ったのに。指導医の言うことは黙って聞いておけ、研修医」

「研修医言わないで下さい!」

「患者の変化が分からないんだ、研修医で充分だろ」

事実、研修中の身であるわけだし

「黒崎先生に言われると何かばかにされてる気がするんです!」

といってる間に海斗は踵を返して歩き出している

「まったく。無駄な体力を使った」

とかなんとかつぶやきながら

「ちょっと!!待ってくださいってば!!」

何回言わせるんですかー!

追いかける背は、やっぱり遠い
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