あの頃…
「えっと、ね。確かコーポ、森?」
なんてあいまいな記憶だろうか
「まあ、とにかくよろしくね」
あ、送るだけよ。間違っても襲ったりしないでね
と笑顔で言ってくる神宮寺に
「女には不自由してません」
と返した
いつも医局で眠るしるふを起こす要領で意識を引き戻す
歩きながらもこくこくと舟をこぐしるふ横に、
そんなに寝不足なのだろうかと思いながらタクシーに押し込み
走るのは夜の街
時々ゴツン、と痛そうな音をたてるしるふの頭とタクシーのガラス
それでも起きないのだから放っておくことにする
流れる景色を見ながら思うのは、
なぜこんなのの指導医をやっているのか、だ
予定では二、三日でしるふが医局から消えていくか、違う指導医につくはずだったのに
それでお役目ごめんになり、あの平凡な日々に戻れるはずだったのに
何がどこでどう間違ったのか
しるふが来てから数週間、未だに指導医をしている
なんてあいまいな記憶だろうか
「まあ、とにかくよろしくね」
あ、送るだけよ。間違っても襲ったりしないでね
と笑顔で言ってくる神宮寺に
「女には不自由してません」
と返した
いつも医局で眠るしるふを起こす要領で意識を引き戻す
歩きながらもこくこくと舟をこぐしるふ横に、
そんなに寝不足なのだろうかと思いながらタクシーに押し込み
走るのは夜の街
時々ゴツン、と痛そうな音をたてるしるふの頭とタクシーのガラス
それでも起きないのだから放っておくことにする
流れる景色を見ながら思うのは、
なぜこんなのの指導医をやっているのか、だ
予定では二、三日でしるふが医局から消えていくか、違う指導医につくはずだったのに
それでお役目ごめんになり、あの平凡な日々に戻れるはずだったのに
何がどこでどう間違ったのか
しるふが来てから数週間、未だに指導医をしている