あの頃…
「そんなに言うなら指導医変えてもらったどうだ」

あの医局長なら快く替えてくれるだろう

しかも相手が将来のERの花・立花しるふとあっては

「嫌です!」

「変な意地張って」

「意地なんて張ってません!!私はただ!あれだけ気に食わないのならせめて盗めるだけ技術を盗んでやろうと思ってるだけです!!」

そうじゃないと割に合いません!!

キッと力を入れれば利き手だけに無駄な力が入って結び目が曲がってしまう

「さすがお気に入り。ちょっとのことじゃめげやしない」

しるふの言葉に腹を抱えて笑いながら荒井がソファを叩く

「だから!立花ですって!!何度言わせるんですか!!」

第一!!

「黒崎先生って何なんですか!私とそんなに年変わらないのにあの余裕と落ち着き!!」

頭来る!!

こっちは海斗の指示について行くことに精いっぱいで

気がつくと肩に変な力が入ってしまっているのに

「あれは諦めの塊だからな」

ぼそりとつぶやいた荒井の言葉はしっかりとは聞き取れない

「荒井先生?」

ごろりと背中を向けて再びゆっくりと上下し始める彼の背を見つめる

「まあ、しっかり育てよ、お気に入り」

「だから!!立花です!!」

覚える気有ります!?
< 38 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop