あの頃…
「結紮の練習」

他に練習する時間ないし

「熱心ねえ」

呆れ交じり感心交じりに莉彩がつぶやく

「だって、少しは見返してやりたいと思わない?」

「私は、しるふのその負けん気の強さの方が驚き」

相手はあの黒崎海斗

そこまで対抗心を燃やすしるふがすごい

「私はそこまで頑張る気ないかなー…」

言いながらふと視線のやった先

「にしてもしるふさー、気をつけなよ」

足を止めた莉彩につられてしるふも立ち止まる

「何が?」

「黒崎先生。結構口悪いし、あんな性格だから忘れてると思うけど、あれでも黒崎病院跡取り息子」

それはそれは求婚者だって多いのだ

「ほら」

そう言われて莉彩の指をたどれば、

「この間見かけた人とは違う人。どんだけモテるのかしら」

そりゃ女には不自由してない発言が様になるわけだわ

納得したように頷く莉彩の横で

「何、あれ」

目をそらせない

海斗とその前に立つ一人の女性
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