あの頃…
誰が怒るもんか、あんな鬼にどんな人が寄って来ようと知ったこっちゃない

そう思うのに

思いたいのに

海斗の前に立つあの儚げな瞳が

光にあたって輝く髪が

必死に見上げる小さな姿が

どうしたって忘れられなかった

「ねえ!そっち遠回りだってば!!」

後ろから追いかけてくる莉彩の声を聞きながら

初めて黒崎病院跡取りの意味を

その立ち位置を理解した気がした

「なんか、すごい腹立つ」

何に、なのかはまったくわからないけれど

行きついた先は、喪失感でも劣等感でもなく、

理由のわからない怒り

戻ってきたら「休憩終わってますよ」とでも嫌味っぽく言ってやろう

そう、心に誓いながら

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